グランドスタッフは人と向き合う仕事。彼らの多くが、印象的なお客様との一期一会を経験しています。本記事ではグランドスタッフの心に残る、お客様との 3 つのエピソードを紹介します。

いつもカウンターで業務をこなしていた時、ご年配の女性に空港からの交通経路について尋ねられました。その目的地が一般的な駅や観光地ではなかったので、なんとなく違和感を感じつつも調べました。モニター越しに見える彼女は大きなカバンの持ち手を両手で握って俯うつむいており、ただならぬ様子でした。
どうしても気になって「今回はご旅行ですか?」とお聞きすると、震える声で「息子が事故を起こしてしまったんです……」との返事が。お客様はその賠償金を払うために、山形県から単身で上京されたそうです。
オレオレ詐欺かもしれない。そう直感的に思いました。携帯電話をお借りして、かわりに私が「息子」と名乗る相手と電話で話しました。すると、会話の内容が二転三転。彼が詐欺師であることを確信し、すぐに警察に通報。
その後本当の息子さんとも連絡が取れ、瀬戸際で詐欺を防ぐことができました。グランドスタッフとして察知した違和感を信じて、行動に移せて良かったです。
10 年ほど前、白杖をついた男性と、女性の新婚カップルを飛行機の搭乗口までご案内しました。
ゲートまでの短い間ですが、奥様も目が不自由であること、職場恋愛で結ばれ今年入籍したばかりで、今から函館に新婚旅行に向かうことなどをお話いただきました。
ふとしたやりとりからお互いを思いやっていることが伝わってきて、とても幸せそうな姿が印象に残っていました。
その 3 日後、偶然羽田に戻ったおふたりに再会。京急乗り場までご案内することになり、楽しかった新婚旅行の思い出をうかがうことができました。
一期一会だからこそお客様と向き合うときは心を尽くそう。そう思い直した出来事でした。その後結婚して退職した今でも、おふたりの幸せそうな笑顔が心に残っています。
私はグランドスタッフとしては要領が悪く、中々仕事に馴染むことができませんでした。私が不甲斐ないせいでお客様にお叱りを受けることもあり、毎日泣きそうになりながら仕事をしていました。
そんなある日、壮年の男性から「空港に着いてから携帯をなくしたかもしれない」というお申し出がありました。とてもご不安そうな様子です。シワひとつないスーツから、この後大事なお仕事があるのが察せられました。
とっさにトランシーバーで近くにいるグランドスタッフの先輩達に呼びかけ、携帯電話の大捜索を開始。すぐに見つかり、携帯電話をお渡しすることができました。
本当に急いでおられたようでお客様は素早く頭を下げながら、走ってタクシー乗り場へと向かって行きます。グランドスタッフ一同、ほっと胸を撫でおろしました。
後日、携帯電話を失くされたお客様から、本社にお手紙と有名な地元の銘菓が送られてきました。ロッカーでお手紙を読んだ瞬間、涙が止まりませんでした。
『御対応いただいたグランドスタッフの方々のサービスに感動いたしました。ずっと貴社の飛行機を利用してきた自分へのご褒美のようです』。
今でもこのお手紙は、私の宝物であり原点です。